2005年2月1日(火) <第1032号>
連載コラム「私の職務経歴書」(全11回)
− 日々精進を重ね続ける事がわが国中小零細企業の生命線 −
<バックナンバー>
○ 橋川 栄二さん
【01】"わが国の実態経済は相当深刻で・・・"
【02】"量産品は中国やタイを中心とした海外組に任せ・・・"
【03】"IT革命がもたらす過度の情報に躍らされて・・・"
【04】"限られた経営資源の中では・・・"
【05】"国策として、産学連携や大学発ベンチャーの創出とか・・・"
【06】"わが国ものづくりのキーワードのひとつは・・・"
【07】"弊社のコア技術は放電加工という特殊技術であり・・・"
【08】"近く、地元の小学校5年生の有志が・・・"
【09】"企業の安定成長を図ろうと思えば・・・"
【10】"つい先日、小学5年生の男女5名ずつ・・・"
【11】"昭和から平成になって早や17年・・・"
− あとがき −
橋川 栄二さん(橋川製作所・代表取締役) に10の質問を試みました。
増野 秀夫(オプティワークス・代表取締役)が聞き手です。
1.ターゲットユーザ
【Q.1】誰に貴社の技術を知ってほしいですか?
ものづくりで行き詰まった時、誰かに相談したり、製作を頼んでみたいと思った当事者に、あるいはそういった相談を請ける公設研究機関の方々です。
2.競合する製品やサービス
【Q.2】貴社の競合会社はどこですか?
弊社ほどオールマイティな対応が図れる同業者は無いと思いますが、キャパが限られていますので縁ある方からキャパに見合った仕事が頂けており、そこには競合という概念はありません。
【Q.3】貴社の競合技術は何ですか?
高度化してきたものづくりの現場においては、これまでのように単に競合という概念で考えるのではなく、切削加工や研削加工、放電加工以外にも超音波加工にレーザ加工等、様々な選択肢の中からいかにして最適加工法を選択するかが課題となってきており、多軸複合機の活用や、加工内容に応じた最適設備の選択検討がなされています。
設備投資の判断は、企業経営を左右する最重要項目の一つであることは昔も今も変わらないと思いますが、本文でも述べました通り、進化のスピードが想像以上に早くなってきており、常に最先端の技術開発動向を睨みながら、正しい判断であったかどうかを検証し、適切な追加補完措置を講じていく必要があると思います。
弊社では現在、国家プロジェクトの一環として、レーザ加工と放電加工の最適組合せによる新素材の最適加工法を開発中で、今後のわが国ものづくりの中核を担える可能性を秘めた非常に楽しみな技術で、1日でも早く皆様方に成果をお伝えしたいと思っています。
従いまして、弊社の技術は不断の研究開発努力を継続中の進化の過程にある独自技術と言えるものです。
しかし、微細加工領域を中心に、究極のものづくり技術が要求される特定の分野においての最適加工法候補として、如何に認知して頂くかが課題であり、そういった面では比較対照となる技術全てが競合技術と言えます。
3.特徴
【Q.4】貴社が負けない技術やサービスや人材は何ですか?
制約条件が最も少なく、最も短期間に、最も低コストで、最も高い品質と精度でものづくりが可能であること。
例えば、お客様自身やよそ様で出来うる所までは既に加工が施され97%程度完成し、最期の最後に微細穴を斜めに開けて下さいといった依頼に対し、上記条件で応えられる。お客様の無理な要求に対し、場合によっては休日24時間体制にてスタッフ全員で自主的に役割分担を図った上で対応するよう努力していますので、技術・サービス・人材すべての質はどこにも負けません。
4.コダワリ
【Q.5】どうして「放電加工」技術に拘っているのですか?(その熱き思いをお聞かせください。)
汎用技術では前加工があったらやりにくいとか、保持するための大きさが必要であるとか、何かと制約事項が多いのですが、放電加工は今あるものを活用して創意工夫すれば柔軟に対応することができる便利な技術です。
しかも工具の制約が一切なく、自作も容易で、刃先の概念が無いことから、たて横斜め自在な方向に加工ができます。
非接触で加工反力が小さく、品質・精度も自在に調整可能等、自由度が高く、かつ発展途上の可能性を秘めた将来性豊かな技術です。
データベース通り、ボタンを押せば誰でも出来る汎用性が品質管理の手法では要求されますが、この考え方への依存率が高いと差別化が困難なため、経営を圧迫することに気付かなければなりません。
私は、この技術はあくまで特殊技術として開発現場の最前線で、他の技術で行き詰まった時に用いられるべき課題解決用の最終兵器として戦略的に保持しておく必要がある技術であると認識しています。
放電加工の一般的使用法を見ると、97%完成品の最終工程を担う重要な役割ですから、関与する人の責任は重く、相当大きなプレッシャーを受けます。
しかも、他の技術のように使い慣れた汎用工具を使うのではなく、その仕事に合わせた最適専用工具をその都度設計製作し、初めて用いる工具ながら失敗は決して許されず、かと言って、安全を求めてゆっくりやっていたら、莫大な時間を費やし、その間熱影響を受け続けて結果的に反りや歪で不良になってしまうほどの高いリスクを背負っています。
従って、現場では細心の注意を払いながら、時々刻々と変化する加工状況に合わせて、加工条件の最適化を図るといったチューニング技能が要求されます。
但し、そこには初めての仕事ゆえ、正解が最初から用意されている訳ではなく、その場の状況に応じた個々の自己判断に委ねられるといった実に曖昧な形でしかとらえることができません。
このような経験と勘を頼りとする職人芸的なアプローチが出来の良し悪しを左右しますので、日本人に最も適した技術であると思っています。
現在主流のデータベース志向の画一的なものづくりは諸外国に任せ、職人としての思いが込められたものづくりを推進し、技能も人格も全てが絶妙なハーモニーで絡み合いながら、進化向上のスパイラルに乗って共に成長の過程を歩む中で、相互信頼・相互補完の豊かな人間関係を築き上げることがこれからの生き方ではないかと思います。
5.目標(ゴール)
【Q.6】貴社が「目標」にしている会社はどこですか?
技能職人の育成と社会的地位の向上に努力している会社。株式会社デンソー。
【Q.7】貴社が極める技術は何ですか?
「相互補完特殊加工技術」と「新素材特殊加工技術」
6.PR
【Q.8】貴社がマスメディアから取材を受けたことがありますか?(新聞、雑誌、インターネット上で紹介された内容があればお知らせください。)
平成14年(2002年)11月12日 広島テレビより取材を受け、11月14日開催された「ナノテクノロジー技術交流展示会」(広島ワシントンホテル)の地方版ニュースとして夕方18時半からのニュース番組で放映されました。
雑誌やインターネットの紹介記事に関しては弊社HPに掲載中です。
7.リーダーの資質
【Q.9】あなたは従業員をほめてはげましていますか?
失敗がつきものの過酷な職場です。仕事を通じて自らが成長できる理想的環境にあるという意識を植え付けると同時に、個々の課題解決時においてはほめたり、失敗した時には社長がフォローするから、早く気持ちを切替えるよう励ました上で、再発防止策を検討するよう指導しています。
やりがいや達成感を自信に置き換え、お客様には自信と責任をもって対応するよう指導しています。新人でも1年も経過すれば、親御さんも関心されるほど責任感が強く頼もしい人物へと成長されており、私の楽しみのひとつです。
【Q.10】あなたは従業員に「ありがとう」を言えますか?
これまでは、ボランティア的なサービス業でしたが、わが国ものづくりの一翼を担える戦略的技術としてビジネス成果を上げたいと思っています。
厳しい環境の中、充分な対価を給与として還元できない中、私の経営方針を理解し、ついてきてくれた社員には感謝の気持ちで一杯で、遅くまで頑張ってくれた日や、休日出勤・変則勤務等の出退勤時には、直接ありがとうやご苦労さんと言っています。
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