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DRIVEN NEWS BACKNUMBER

2007年4月1日(日) <第1821号>

                    − さまざまな人たちとの対話 −

今週はコミュニケーションの約束事とコミュニケーションの現状を見ていきます。

対話の目的は、対話とコミュニケーションを理解し、その可能性を広げることにあります。

【07】コミュニケーションの事例(その2)
<飲み屋の会話>
「とりあえず一杯飲みに行こう!」

そこで交わされる話題は3つだけです。
一つは仲間の噂話。二つ目は上司の悪口。最後は自分の自慢話。

<患者と医者>
○「あいまい」の壁
1.乳がん患者が抗がん剤を受けるかどうかを相談しています。

患者
「抗がん剤治療をすると、将来、妊娠できなくなりますか?」
医師
「抗がん剤を受けた後で、生理が戻る患者さんもいます。」

医師は「生理が戻らない患者さんが多い」ことを表現を和らげて伝えたつもりだが、患者は逆に期待が高まりました。

[注意する点]
生理が戻る可能性と戻らない可能性はどちらが大きいか、閉経してしまった場合に備えて卵子の凍結保存をする方法はあるかなど詳しく聞いておきましょう。

2.脳腫瘍の手術を受ける前に説明をしています。

患者
「合併症はありますか?」
医師
「重大な合併症が起きる確率は飛行機が落ちる程度です。」

医師は「かなり低い」という意味で言っのですが、そのころの飛行機墜落のニュースが印象に残っていた患者は「意外と高い」と受け取りました。

[注意する点]
人によって感じ方が違います。言葉ではなく、具体的な表現や数字でやりとりします。

3.造影剤を使うCT検査前の確認をしています。

患者
「検査を受けて副作用があるといけません。腎機能障害はないですね?」
医師
「はい。ジンキノウショウガイっていうのはありません。」

患者は聞いたことがない単語なので大丈夫だと思い込んでいましたが、後で採血を確認したところ、普段から血清Cr濃度(腎不全の度合いを調べる数値)が規定値を超えていました。

[注意する点]
「腎臓が弱いですか?」「造影剤は使えないなどと言われたことはありませんか?」などと分かりやすい言葉でやりとりします。

○「思い込み」の壁
1.膝の手術を受ける前に説明しています。

医師
「手術をしたら治るからね。」
患者
「ああよかった。治るんですね。」

手術後も痛みが残り、患者は「一向によくならない」と気に病んで心療内科で治療を受けました。
患者は「治る」を「完治」と思っていたが、医師は「手術前より良くなる」という意味でした。

[注意する点]
後遺症が残る可能性、どの程度の治療を期待していいかをきちんと聞いておきましょう。

2.乳房の再建手術を受ける前に説明しています。

患者
「再建した乳房はキレイですか?」
医師
「キレイになりますよ。」

医師は「膨らみのあり十分キレイな胸を再現できた」と思ったが、
患者は「膨らみの形も左右の対称性もめちゃくちゃ。キレイとはほど遠い」と感じた。

[注意する点]
あらかじめ仕上がり予定を絵や写真で示してもらいましょう。

3.白血病の患者が化学療法を受けます。

医師
「この治療をすれば80%はカンカイします。」
患者
「カンカイですね。ほっとしました」

医師の言った「寛解」は「血液中の白血病細胞が検査で認められなくなること」で、完全に治癒することではありません。患者は「完全、全快」と解釈。後で5年生存率は40%程度と聞いてショックを受けました。

4.家族同伴で手術の説明を聞いています。

医師
「この手術の危険率は1割ぐらいです。」
患者・家族
「では、お願いします。」

患者は手術後に容態が急変して死亡。患者側は「副作用や合併症が起こる確率」だと思っていましたが、医師は死亡の可能性として伝えていました。

[注意する点]
「死亡率」「副作用」「合併症」など具体的な言葉で確認しましょう。

5.子宮傾頸がんの検査結果を聞く

医師
「あなたはクラス3だったので、大きな病院で精密検査を受けてください。」
患者
「わかりました。」

患者は帰宅後にインターネットで調べて「がんの分類で3期は進行がんと書いてある。もう助からないのでは」とショックを受けましたが、医師が伝えたのはクラス1から5まである「細胞診」の数字でした。

[注意する点]
数字や用語の意味を分かるように説明してもらましょう。

医師が使う言葉には「組み立て方」が必要です。
『この手術をしたらあなたは60%の確率で助かります。でも40%の確率で死ぬかもしれません。』と言われたら、患者さんはかなり悲観的に捉えてしまいます。

順番を逆にして『40%は失敗するかもしれませんが、60%は助かる可能性があります。』と伝えると、
より前向きに感じることができます。対話を重ねるたびに言い方を微妙に変えながら、患者さんの理解度を深めていくことが重要です。

自分の患者の感情をしっかり認知できる医師は患者の治療に成功します。
医療分野は共感性から生まれる利益を最近になってやっと気づいた分野です。自分の患者の感情をしっかり認知できる医師のほうが、感受性に欠ける医師より患者の治療に成功を収める確率が高いのです。

医師たちは患者の言い分にはほとんど耳を傾けていないのです。患者は平均すると4つの質問をもって医師のところへやってきます。しかし、実際の診療時には、このうちの一問か二問しか尋ねることができずに終わっています。また患者がしゃべりはじめたあと、医師による最初の割り込みが数十秒後に行われています。

一度も誤診を理由に訴えられたことのない医師は、十分に時間をかけて治療の効果について患者に説明し、冗談を言ってたびたび自らも笑顔を示し、患者の意見を求めて理解度をチェックし、患者からの発言を促しています。

ところで医師として共感性を示すためにどれくらいの時間が必要なのでしょうか?
それはたった3分間で十分なのです。

<a)医学生 b)看護学生 c)内科医 d)外科医 e)ガン医 f)精神科医 g)看護婦>
「わたしはもうだめなのではないでしょうか?」
という患者のことばに対して、あなたならどう答えますか?

(1)「そんなこと言わないで、もっと頑張りなさいよ」と励ます。
a)医学生 c)内科医 d)外科医 e)ガン医 

(2)「そんなこと心配しないでいいんですよ」と答える。

(3)「どうしてそんな気持ちになるの」と聞き返す。
b)看護学生 g)看護婦

(4)「これだけ痛みがあると、そんな気にもなるね」と同情を示す。

(5)「もうだめなんだ・・・とそんな気がするんですね」と返す。
f)精神科医

精神科医の多くが選んだのは(5)です。

これは回答ではなく、「患者の言葉を確かに受けとめましたという応答」なのでした。「〜というわけですね」というふうに、自分のことばを受けとめてもらえる経験、自分のことばを聴きとってもらえる経験が、受苦者にとってはとても大きな力になるということでした。

「聴く」というのは、なにもしないで耳を傾けるという単純に受動的な行為なのではない、それは語る側からすれば、ことばを受けとめてもらったという、たしかな出来事でした。

(鷲田 清一氏 『「聴く」ことの力』から)
             
                                                 (コーチ 小江戸)

<バックナンバー>
【01】コミュニケーションを広げる
【02】コミュニケーションの約束事
【03】コミュニケーションにおける距離感
【04】コミュニケーションの事例(その1)
【05】コミュニケーションの未完了をもたらすもの(その1)
【06】コミュニケーションの未完了をもたらすもの(その2)

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